相続における養子のメリット
自分の子供以外に財産を承継させたいときはその者と養子縁組することにより、養子に財産を相続させることができます。
また、法定相続人の数には他に実子がいる場合は養子1人まで、実子がいない場合は養子2人まで含めて相続税の基礎控除額(遺産に係る基礎控除)を1人あたり600万円増加させて計算し、税負担が少なくなります。ほかにも生命保険の死亡保険金および死亡退職金についても法定相続人1人あたり500万円が非課税となり、相続税額を少なくすることができます。
相続人の子が代襲相続人となる場合
相続人となる子が先に死亡していた場合、その死亡した子の子は代襲相続人として親の代わりに相続できます。ただし、代襲相続人から被相続人の直系卑属でない者は除くとされています。
ところで被相続人の養子が先に死亡していた場合、養子縁組前から養子の子が被相続人の代襲相続人になれるかが問われた裁判がありました。
養子の子が代襲相続人になれない場合
令和6年11月、最高裁では養子の子が代襲相続人になれないとされました。被相続人には配偶者も子もなく、親も死亡していました。そこで被相続人の母と養子縁組していた被相続人の従妹がただ一人、被相続人の兄弟姉妹(養子)として相続人になりますが、被相続人より先に死亡していたため、その子(養子の子)が代襲相続人として不動産の所有権移転登記を申請しました。登記官は「申請の権限を有しない者の申請」であるとしてこれを却下したため、裁判となりました。
原審(高裁)は、兄弟姉妹が相続人となる場合、代襲相続人の条件である「被相続人の直系卑属でない者を除く」を「傍系卑属でない者を除く」と読み替え、養子の子は傍系卑属で代襲相続人になれるとしました。
最高裁は養子縁組前に出生した養子の子は養子縁組による血族関係を生じないことから代襲相続人になれないとした過去の判例を参照し、本件においても被相続人の兄弟姉妹が被相続人の親の養子の場合、養子の子は被相続人と養子の共通の親の直系卑属でないことから養子の代襲相続人とはなれないとしました。
本件では、遺言書を作成しておけば相続できたものと思われます。傍系卑属の養子縁組には注意が必要です。