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コラム
2024.12.05

残業の業務委託への切り替えは有効か?

内閣府「政策アイデアコンテスト」

内閣府が全職員対象の「賃上げを幅広く実現するための政策アイデアコンテスト」にて、「残業の業務を従業員が個人事業主としてこなし、手取り増を図る」というアイデアが優勝施策の一つに選ばれました。

この施策のモデルケースは、年収500万円(うち100万円が残業代)の社員が残業代100万円分を雇用契約から個人事業主の業務委託に切り替えることにより、社員は社会保険料と所得税の負担減で手取りが増え、企業も社会保険料が節約できるというwin-winのスキームでした。

 

「偽装請負」に該当しないかと問題に

 このスキームでは同一人物が所定労働時間は労働者として働き、残業は個人事業主として業務委託による報酬を受け取ることになります。

 所定労働時間の業務内容と時間外の業務内容が同じなら、後者については「偽装請負」と判断される可能性が否定できないとして、このスキームには問題があるのではとの指摘を受けました。

内閣府はその指摘を受けたためか、「一定の周知期間が経過し、個人情報が含まれる等を考慮の上、掲載を終了しました」として、このアイデアの概要は、ホームページから既に削除されています。

 

「雇用契約」と「業務委託」の違い

昭和6012月の「労働基準法研究会報告(労働基準法の「労働者」の判断基準について)」において、以下のような労働者性の判断基準が示されています。

・諾否の自由(断ることができるか)

・指揮監督の有無(具体的指示の有無)

・拘束性の有無(時間・場所等の拘束)

・代替性の有無(他人に任せて良いか)

・機械、器具の負担関係(本人負担か)

・報酬の額(労務の対償ではないか)

 これらを総合的に勘案して、労働者性が判断されますが、契約の名称ではなく、実態で判断されます。

業務委託には労働時間規制は適用されないため、過重労働の懸念や、労災が適用されないなどの問題もあり、残業の業務委託が認められる可能性は低いと思われます。

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