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コラム
2024.12.14

成年後見制度について解説

成年後見制度とは、認知症や知的障害などにより判断能力がない人の財産管理や生活維持のために後見人などを選任し、法律面で支える制度のことです。

成年後見制度には、大きく「法定後見制度」と「任意後見制度」の2種類の制度があり、それぞれについて解説します。

法定後見制度

法定後見制度とは、本人の判断能力が不十分になった場合、家庭裁判所によって選任※された成年後見人等が本人を法律的に支援する制度です。法定後見を受けようとする場合、家庭裁判所に申立を行い、家庭裁判所が後見人等を選任し、法定後見が開始します。特別の事情がない限りは本人が死亡するまで続きます。

※本人の親族のほか、法律や福祉の専門家(弁護士、司法書士、税理士など)、その他の第三者(市民後見人)、福祉関係の公益法人などが選任されます。

  • 法定後見制度の種類
  • 主な役割
  • 手続きの流れ
  • 費用

法定後見制度の種類

法定後見制度では、本人の判断能力に応じて「後見」「保佐」「補助」の3つの制度が用意されています。どれに当てはまるか、また判断や後見人等(後見人、保佐人又は補助人)を誰にするかは、申立の理由、医師の診断書、本人との面談などを総合的に勘案して家庭裁判所が決定します。それぞれの違いは次の通りです。

後見 保佐 補助
対象となる人 判断能力が欠けているのが通常の人 判断能力が著しく不十分な人 判断能力が不十分な人
申立ができる人

本人、配偶者、四親等内の親族、検察官、市町村など

本人以外の方の申立により、保佐人に代理権を与える審判をする場合、本人の同意が必要になります。補助開始の審判や補助人に同意権・代理権を与える審判をする場合も同じです。

同意が必要な行為

なし

※日常生活に関することを除き、本人は法律行為ができない

民法13条1項※所定の行為

申立ての範囲内で家庭裁判所が審判で定める「特定の法律行為」

取消が可能な行為 日常生活に関する行為を除くすべての法律行為 民法13条1項※所定の行為 代理権または同意権が付与された行為
代理権の範囲 財産に関するすべての法律行為 申立ての範囲内で家庭裁判所が審判で定める「特定の法律行為」 同左

※民法13条1項には、借金、訴訟行為、相続の承認・放棄、新築・改築・増築などの行為が挙げられています。

主な役割

主な役割は以下のとおりです。

財産の管理 預貯金の入出金
有価証券の管理
生活費の支払い
不動産の管理
遺産相続の代行
税務申告
身上監護

病院の入院契約
高齢者施設への入所契約

手続きの流れ

申立(申立人が本人の管轄の家庭裁判所に申し立てる)

後見人の候補や本人の判断能力の診断、必要書類を収集します。

家庭裁判所の審理

申立人や候補者との面談、本人との面談、親族(法定相続人)の意向を照会などを行います。

成年後見の開始の審判、成年後見人等の選任

審理の結果、後見が必要と判断された場合、後見人の候補者が選任されます。
その後、後見人の報酬が決定され、選任された人に審判書が郵送されます。

審判の確定(成年後見の開始)

審判書の到着後、2週間経過すると後見が開始します。後見開始や後見人の住所・氏名・権限などが法務局に登記されます。

費用

成年後見が開始すると、後見人への報酬支払が発生します。報酬額は家庭裁判所が目安を示しています。基準をもとに本人の支払能力に応じ、家庭裁判所が決定します。

業務内容 報酬
基本報酬 通常の後見事務 管理財産額 報酬額(月額)
1000万以下 2万円
1000万超~5000万 3~4万円
5000万超 5~6万円
付加報酬 身上監護等に特別困難な事情があった場合 基本報酬額の50%の範囲内で相当額の報酬を付加
特別な行為をした場合 訴訟、遺産分割調停などをした場合、
相当額の報酬を付加する場合がある

任意後見制度

任意後見制度とは、本人の判断能力が十分なうちに、あらかじめ後見人となってくれる人と任意後見契約を締結し、そこで選任しておいた任意後見人に、将来、自分が認知症や精神障害等で判断能力が不十分になったときに支援を受ける制度です。

  • 申立手続き
  • 申立ができる人
  • 権限

申立手続き

本人と任意後見人となる方との間で、本人の生活、療養看護及び財産管理に関する事務について任意後見人に代理権を与える内容の契約(任意後見契約)を締結します。
※契約は、公証人が作成する公正証書により締結することが必要です。

その後、本人の判断能力が不十分になった後に、家庭裁判所に、任意後見監督人の選任の申立てを行います。

申立ができる人

本人、配偶者、四親等内の親族、任意後見人となる人が申立を行うことができます。

※本人以外の方の申立てにより任意後見監督人の選任の審判をするには、本人の同意が必要です。ただし、本人が意思を表示することができないときは必要ありません。

権限

任意後見契約で定めた範囲内で代理可能ですが、本人が締結した契約を取り消すことはできません。

成年後見制度と生前贈与・相続

生前贈与はできるのか

贈与する人が成年後見制度を活用していた場合、生前贈与することはできません。

成年後見制度は、本人の財産を減らさないように保護するための制度であり、生前贈与は財産を減らす行為となるため、生前贈与を行うことはできません。

相続で成年後見人が必要な場合やできること

相続手続きにおいて、判断能力が不十分な人に代わり、成年後見人ができること以下の通りです。

遺産分割協議への参加

遺言書を残さずに亡くなった場合、相続人全員で遺産をどう分けるかを話し合います。(遺産分割協議といいます)遺産分割協議への参加は法律行為であり、判断能力が不十分な場合、遺産分割協議が無効になります。

そのため、遺産分割協議を進めるためには、成年後見人が必要になります。遺産分割協議では、成年後見人が家庭裁判所と相談しながら、協議内容に問題がないか判断します。最低でも法定相続分の割合に相当する遺産が受け取れるような内容にならなければ、合意は難しいと考えられます。

なお、遺産分割協議で成年後見人が不要な場合もあります。

①遺言書はないが、法律で決められた法定相続分の割合で遺産を分ける場合
②遺言書がある場合(基本的には遺言書の内容に従って遺産を分けるため)

相続放棄・限定承認

成年後見人は、相続放棄や限定承認の申立手続きを本人に代わって行うこともできます。申立てに家庭裁判所の許可を得る必要はありませんが、実務上は家庭裁判所に相談しながら進めていくことになります。

相続税申告・相続登記

相続税申告や、不動産を取得することとなった場合の登記申請は成年後見人が代理で行うことができます。

成年後見人による不動産の売却

成年後見人になった場合でも、自由に不動産を売却できるわけではなく、適切な手順を踏む必要があります。

本人が住んでいる「居住用不動産」と「非居住用不動産」で売却手順が異なります。

居住用不動産の場合

居住用不動産を売却するには、家庭裁判所や、成年後見監督人(後見人をサポートする立場の人)の同意が必要になります。

家庭裁判所。成年後見監督人の同意を得ず、居住用不動産を売却した場合、その売買契約は無効になります。

契約が無効になると、売却代金の返金があるほか、家庭裁判所の判断により後見人を解任される可能性もあります。

手続きの流れ

①不動産会社と媒介契約を結ぶ
②売却先を探す
③買主と売買契約を結ぶ
④管轄の家庭裁判所に申立を行う
⑤家庭裁判所の許可を得たら売却代金を受け取る
⑥不動産を引き渡す

売買契約後に家庭裁判所に申立を行う以外は一般的な不動産売買の流れと同じです。

売却の必要性がない、意向に反している、売却代金が適切でないなどの場合、申請が却下となる可能性もあります。

家庭裁判所への申立必要書類

①居住用不動産処分許可の申請書
②不動産の全部事項証明書
③不動産の売買契約書(案)
④不動産の評価証明書
⑤不動産業者が作成した査定書
⑥成年後見監督人の意見書(成年後見監督人がいる場合)

家庭裁判所によって必要書類が異なるケースがあるため、必ず事前に管轄の家庭裁判所に確認しましょう。

非居住用不動産の場合

非居住用の不動産の流れは一般的な不動産売買の流れと同じです。

①不動産会社と媒介契約を結ぶ
②売却先を探す
③買主と売買契約を結ぶ
④売却代金を受け取る
⑤不動産を引き渡す

居住用不動産と違い、家庭裁判所などの同意は必要ありませんが、不動産売却を行う正当な理由(生活費や医療費を捻出するためなど)がなければ売買契約が無効になる可能性もあります。

まとめ

成年後見人についての基礎知識、法定後見制度や任意後見制度の違いなどについて解説しました。成年後見制度は一度利用すると本人が死亡するまで終わりません。メリットやデメリットを吟味に慎重に判断することが大事です。

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