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コラム
2024.09.18

土地を相続したときにかかる相続税を解説 | 計算方法や相続時の注意点

土地を相続する際に、相続税がかかるのか、またいくらかかるのか不安を感じていませんか?本記事では、土地を相続した方や土地を相続する予定の方向けに、相続税の計算方法や土地の評価方法、土地相続に関する注意点を解説します。

目次

土地を相続したときにかかる相続税の基本

  • 相続税とは何か
  • 土地相続の特徴 
  • 相続税がかからないケース

相続税とは何か

亡くなられた被相続者が、一定(基礎控除額)以上の財産を持っている場合に発生する税金です。亡くなられた日から10ヶ月以内に申告と納税を済ませなければなりません。

土地相続の特徴

一口に土地の相続と言っても様々なケースがあります。更地なのか、建物があるのか、誰が住んでいるのかなど、土地の種類(宅地、畑など)、利用状況により、評価方法も大きく変わってきます。

相続税がかからないケース

相続した財産が基礎控除額以下であれば、相続税の申告は不要です。基礎控除額とは、非課税となる一定の金額があり「3,000万円+(法定相続人の数×600万円)」により計算されます。

自分では相続税の申告は不要だと思っていても、財産の見落としや計算間違いなどにより基礎控除額を超えている場合があるため、相続税の申告が不要かどうかの判断は慎重にしなければなりません。

土地の評価と評価額の算出方法

土地の評価は以下のように計算します。

  • 路線価と固定資産税評価額
  • 評価額の補正方法
  • 宅地としての評価とその方法

路線価と固定資産税評価額

土地の評価は大きく分けて、路線価方式と倍率方式という2つに区分されます。どちらを用いるかは、評価する土地の所在地で決まります。

路線価方式

路線価(国税庁が公表している1㎡あたりの土地の価格)に面積を乗じて評価する方式です。計算式は「路線価×補正率×面積」となります。

倍率方式

固定資産税評価額に、地域ごとに定められている倍率を乗じて評価する方式です。計算式は「固定資産税評価額×倍率」となります。

評価額の補正方法

土地を路線価方式で評価する際、土地が面している道路の路線価に対象地特有の補正を加味していきます。補正には様々な種類があり、増額する場合も減額する場合もあります。

一例を挙げると、増額となるものには、側方路線加算(角地など)、減額となるものには、不整形地補正(土地が真四角でない場合)、セットバック(全面道路が4m未満)、奥行価格補正・間口狭小補正(細長い土地など)などがあります。

宅地としての評価とその方法

宅地は、利用形態等により評価方法が変わります。利用形態には、自用地(自分で使用している宅地)、貸宅地(他人に貸している宅地)、貸家建付地(貸家が建っている宅地)などがあり、評価方法も変わります。

相続税の計算方法

相続税は、以下にように計算されます。

  • 相続税の計算基礎
  • 税額控除と基礎控除の適用
  • 税額を減らすために利用できる特例

相続税の計算基礎

相続税を計算するには、まず土地・建物や預金など、財産の総額を集計し、その後、財産の総額から葬儀費用や借入金・未払金などの債務を控除します。

税額控除と基礎控除の適用

財産から債務を控除した金額の集計後、次は基礎控除額を差し引きします。基礎控除額は「3,000万円+(法定相続人の数×600万円)」で算出します。

基礎控除額を差し引き後、法定相続分で分けた場合の金額を相続人ごとに算出し、それぞれの金額に税率を掛けて計算します。

算出した税額を実際に相続した割合で振り分け、配偶者控除、未成年者控除、障害者控除、贈与税額控除、相次相続控除などを差し引いたものが最終的な相続税額になります。

税額を減らすために利用できる特例

相続税法には、過大な税負担の防止や社会政策的な配慮から、以下の特例、控除の制度が設けられており、該当する場合には、税額を軽減することができます。

  • 小規模宅地の特例
  • 非課税限度額のある財産(生命保険金)
  • 配偶者の税額軽減
  • 未成年者控除
  • 障害者控除
  • 相次相続控除
  • 贈与税額控除

土地相続の手続き方法

土地を相続する際の流れや注意点などを説明します。

  • 土地相続の手続き全体の流れ
  • 必要書類とその取得方法
  • 相続登記の手続きと注意点

土地相続の手続き全体の流れ

①法定相続人の確定

誰が法定相続人なのか、戸籍謄本などにより、確定させます。

②遺言書の有無を確認

自筆の遺言書がないか、公正証書遺言がないか確認を行います。

③相続財産の調査

不動産や預貯金、株式など、どのような財産があるかを確認します。

④遺産分割協議を行う(遺言書がない場合)

遺言書がない場合、相続人間で、財産をどうのように分けるかを話し合います。

⑤相続登記を行う

不動産を取得した場合、不動産の名義を法務局で変更する必要があります。

必要書類とその取得方法

必要書類は遺産分割協議の場合、法定相続分で分ける場合、遺言書がある場合でそれぞれ違います。

遺産分割協議の場合

必要書類

取得先

対象者

備考

戸籍謄本(除籍謄本)

本籍地の市区町村役場

被相続人

出生から死亡までのすべての戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍を含む)

相続人全員

被相続人の死亡日以降に発行されたもの

住民票(除票)

住所地の市区町村役場

被相続人

住民票の除票

不動産を取得する相続人

 

固定資産評価証明書

所在地の市区町村役場

登記申請する日の年度のものが必要

遺産分割協議書

相続人が作成

相続人全員の記名捺印(実印)が必要

印鑑証明書

住所地の市区町村役場

相続人全員

発行期限の制限なし(3ヶ月以上経過していても良い)

登記申請書

法務局ホームページ

相続人

代理の場合は委任状が必要

相続関係説明図

申請人

家系図のようなもの

戸籍謄本の原本還付を希望しない場合は不要

遺言の場合

必要書類 取得先 対象者 備考

戸籍謄本(除籍謄本)

本籍地の市区町村役場

被相続人

出生から死亡までのすべての戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍を含む)

不動産を取得する相続人

被相続人の死亡日以降に発行されたもの

住民票(除票)

住所地の市区町村役場

被相続人

住民票の除票

不動産を取得する相続人

 

固定資産評価証明書

所在地の市区町村役場

登記申請する日の年度のものが必要

遺言書

自筆証書遺言:自宅等又は法務局

公正証書遺言:公証役場

自筆証書遺言の場合は家庭裁判所の検認が必要

(自筆証書遺言保管制度を利用している場合は不要)

登記申請書

法務局ホームページ

相続人

代理の場合は委任状が必要

相続関係説明図

申請人

家系図のようなもの

戸籍謄本の原本還付を希望しない場合は不要

法定相続分の場合

必要書類

取得先

対象者

備考

戸籍謄本(除籍謄本)

本籍地の市区町村役場

被相続人

出生から死亡までのすべての戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍を含む)

相続人全員

被相続人の死亡日以降に発行されたもの

住民票(除票)

住所地の市区町村役場

被相続人

住民票の除票

相続人全員

 

固定資産評価証明書

所在地の市区町村役場

登記申請する日の年度のものが必要

登記申請書

法務局ホームページ

相続人

代理の場合は委任状が必要

相続関係説明図

申請人

家系図のようなもの

戸籍謄本の原本還付を希望しない場合は不要

相続登記の手続きと注意点

不動産の名義は法務局が管轄しているため、法務局に相続登記の申請をしなければ名義は変わりません。相続登記を行わず長らく放置した場合、相続人も亡くなり、さらに相続が発生する可能性があります。そうなった場合、多くの相続人の協力が必要となり、多大な時間、費用がかかるケースが多くなります。

また、2024年4月1日から相続登記が義務化されています。今後は正当な理由が無ければ、不動産を相続したことを知ってから3年以内に相続登記を申請しなければなりません。

相続登記に係る費用

相続登記にかかる費用は、以下のとおりです。

必要書類の取得費用 数千円~
相続登記の登録免許税 不動産の固定資産税評価額×0.4
例えば1,000万円の土地であれば1,000万円×0.4%=4万円の登録免許税がかかります
司法書士費用(司法書士に依頼する場合) 5万円~(件数、相続人の数により変動)

親の土地を相続する際の注意点

  • 特例や控除の利用
  • 未成年者の相続について
  • 相続人の権利と義務

特例や控除の利用

親の土地の相続は、利用形態などにより特例を活用することができ、相続税の負担を軽減できる可能性があります。

未成年者の相続について

未成年者でも土地を相続することは可能ですが、注意点があります。未成年者は法律行為を行うことが出来ないため、遺産分割協議などの法律行為を行う場合、法定代理人を立てる必要があります。

未成年者控除

子どもが成人するまでには養育費がかかるため、救済措置として相続税を軽減することができる制度です。

未成年者控除の要件

未成年者控除を活用するための要件は、以下のとおりです。

  • 相続開始日に日本国内に住所があること
  • 財産取得時に18歳未満であること
  • 財産を取得した人が法定相続人であること

未成年者控除の計算方法

未成年者控除の計算は、未成年者が18歳になるまでの年数×10万円です。年数の計算は、相続開始した時の満年齢でカウントし、1年未満の期間がある場合は切り捨てします。

 

相続人の権利と義務

相続人は原則として、亡くなられた方の財産に属した一切の権利義務を包括承継することとなります。不動産、預金などの財産だけでなく、ローンや借入金なども相続します。ただし、肖像権など、亡くなられた方の一身に専属したものは承継されません。

土地相続税の減額・節税対策

土地の相続では、評価を減少させる特例などがあり、その内容について説明します。

  • 小規模宅地特例の利用
  • 生前贈与を活用した対策
  • 専門家への依頼のメリット

小規模宅地特例の利用

 小規模宅地の特例とは、相続税を支払えず、住居や事業用の土地をやむを得ず処分することを回避するためにできた制度です。一定の条件を満たすことができれば、相続する土地の評価額を最大80%減額できます。

小規模宅地の特例には種類があり「特定事業用宅地等」「特定同族会社事業用宅地等」「特定居住用宅地等」「貸付事業用宅地等」に区分されます。

特定事業用宅地等

被相続人等が事業のために使っていた宅地等で、その宅地等を相続税の申告期限まで所有するとともに、その事業を申告期限までに引き継ぎ、かつ申告期限まで引き続きその事業を営んでいる場合などに適用できます。

特定同族会社事業用宅地等

被相続人等が個人で所有していた土地を、自らが経営していた会社(同族会社)の事業の用に供されていた宅地等で一定の条件を満たした場合に適用できます。

特定居住用宅地等

被相続人等の居住のために使っていた宅地等でその取得者が、被相続人の配偶者である場合、あるいは同居親族で申告期限までその宅地等を所有し、かつその宅地等に居住している者である場合に適用できます。

なお、同居していない親族が取得した場合でも、一定の条件を満たす場合には、この特例の適用ができます。(俗称:家なき子の特例)

貸付事業用宅地等

被相続人等が貸付事業(不動産貸付業、駐車場業、自転車駐車場業などに限る)のために使っていた宅地等で、その宅地等を相続税の申告期限まで所有するとともに、その事業を申告期限までに引き継ぎ、かつ申告期限まで引き続きその事業を営んでいる場合などに適用できます。

限度面積と減額割合

特例の種類 限度面積 減額割合
特定事業用宅地等 400㎡ 80%
特定同族会社事業用宅地等 400㎡ 80%
特定居住用宅地等 330㎡ 80%
貸付事業用宅地等 200㎡ 50%

小規模宅地等の特例の詳しい適用の条件などについては、ご相談ください。

生前贈与を活用した対策

将来値上がりしそうな土地は、生前贈与を検討しても良いかもしれません。相続税と贈与税で税率は違うものの、大幅な値上がりが見込まれる場合は、先に贈与税を支払った方が、最終的に税金が安くなる可能性があります。
贈与を行う際は、相続時精算課税制度(60歳以上の父母又は祖父母から、18歳以上の子又は孫へ財産を贈与した場合に、2500万円まで非課税とする制度)を利用することによって税負担を軽減できる場合もあります。

ただし、贈与では、上記小規模宅地の特例は適用されないため、状況により判断が必要です。

専門家への依頼のメリット

土地にかかる相続税の評価は、特例の活用や土地の評価方法により大きく変わってきます。経験豊富な専門家に依頼することにより、節税となる場合があります。

不動産の扱いと相続税の影響

  • アパートや貸家の相続と税金
  • 借地権の評価と相続税

アパートや貸家の相続と税金

アパートや貸家を相続した場合の相続税評価については、土地と建物に分けて考えます。建物の相続税評価額は固定資産税評価額と同じです。

誰かに貸している建物や土地は自分だけのものに比べ、すべてを自由に使うことが出来ないため、価値が落ちるとされています。そのため、相続税評価額も減少させることが可能です。減少割合については、立地や地域により決められています。

借地権の評価と相続税

借りている土地の上に自宅などを建てている場合、住み続けられる権利として借地権があります。借地権は、土地の相続には無関係に思われがちですが、住み続ける権利として相続財産となります。地権には「普通借地権」と「定期借地権」の2種類があります。

普通借地権

契約の更新により何年でも土地を借り続けることができる権利のことで、貸している側からは解約の申し入れができない契約です。

定期借地権

30年や50年など、借りる期間を定めて契約する権利のことで、更新はなく、契約期間が終わったあとは更地にすることが原則のため、建物は取り壊さないといけません。

借地権の相続税評価

普通借地権と定期借地権では、評価方法が変わります。

①普通借地権の相続税評価額=自用地評価額×借地権割合

国税庁が公表している路線価図の中に借地権の割合が記載されており、それをもとに計算します。

②定期借地権の相続税評価額=自用地評価額×(A÷B)×(C÷D)

A:定期借地権等の設定時における借主に帰属する経済的利益の総額
B:定期借地権等の設定時におけるその宅地の通常の取引価額
C:課税時期における定期借地等の残存期間年数に応じた基準年利率による複利年金現価率
D:定期借地権等の設定期間に応じた基準年利率による複利年金現価率

なお、借地権のある土地でも、小規模宅地の特例を使用することは可能です。

まとめ

土地を相続した際、どんな手続が必要になるのか、相続税はかかるのかなど、基礎知識を備えることが出来たでしょうか。相続は突然発生し、気持ちが癒えない中、多くの不慣れな手続きをしなければなりません。焦らずひとつひとつ順を追って手続きを進めていき、大切な財産を適切に分配できるようにしましょう。

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